最初に一つ追記。
「アルバトロス」1幕のヴィーナスの場面。
私、最初は「ああ、これ『ワンタッチ・オブ・ヴィーナス』だ!」と思ったんですよ。
でも、プログラムには「ハイペリオン」と書いてあるらしいと聞いて、あれ、私の思い違いかな?間違えちゃったカナ?まあ、けっこう昔の公演なので・・・と納得したんです。

が!!
あれ、やっぱり『ワンタッチ〜』でいいんですね!
場面の途中、コムちゃんがヴィーナス像にキスするところまでは『ワンタッチ〜』で良いそうです!!
そして、像がくるっとまわってヒメが登場するところから『ハイペリオン』なんですね。

う〜ん、上手くミックスされてるなぁ。
さすがオギー。

ということで、スッキリしたところで、第2幕の感想へ。

最初から、映像の使い方にうならされます。
膝を抱えて座り込んでいたコムちゃんが顔を上げると、背中にいつの間にか羽根が生えてきて・・・・。
すっごく素敵な映像です。センスあるなあ。

お芝居編の最初は、「あの人を探してください」というマコちゃんの台詞から。
この一言の台詞が、お芝居を通してのテーマなんだな。
ヒメ(多分水商売の女性)と、そのヒモ、コムちゃん。ヒメが「お客さんから貰った」チケットでサーカスへ出かけます。
サーカスへの道すがら、アホウドリに見とれるコムちゃんに「大きな翼を広げて、どこまでも飛んでいくの」というヒメ。この台詞が出た時点で、もう私の心はぐらついてしまいました。
そう、こむちゃんは鳥。そうなんだ。
背後には戦闘服を着た少年と、1人の少女。少女を刺してしまった少年は、あれはコムちゃん演じるヒモの昔の姿?
その後、色々な人たち(シトラスの風でコムちゃんが演じた仮面の少女、パッサージュの片翼の天使、香港公園の片足白のレオタード、華麗なる千拍子のパイナップルの女王など)(他にもなんかあったけど、覚え切れなかった)が絡みます。そして、2人は離れ離れに。。。

続いては『アンナ・カレーニナ』『エリザベート』を使ったお芝居へ。
コムちゃんは皇太子ルドルフ。そして、マコちゃんがアンナです。
革命に失敗した皇太子。人の道に外れた恋にも悩んでいた彼は心の安らぎを求めて恋人と共に南の地へ。
ああ、アルバトロスは南へ行くのね。
(実はここで、「ラストパーティー」のスコットとゼルダが行ったイタリアの保養地・リビエラを思い出しました。南の地には、いつの時代もどんな状況でも、なにか救いというかやり直せる赦しというか、そんなものを人に夢見させるチカラがある)
でも、二人を待っていたのは悲しい最後。
同期だからこそ、なのか。今まで一緒に過ごしてきた時間がそうさせるのか。
全てを分かった上での諦めを含んだ2人の表情が切ない。
(この2人、最初から何かを諦めた瞳の色をしています。南へ、といいながらも、ココロのそこでは人生への諦めが見て取れる。そこが切ない)

3つ目のストーリーは「凱旋門」。
すいません、わたし、「凱旋門」ちゃんと見ていません。ので、あの有名な「男同士の別れの抱擁」以外は知りません・・・。
ドイツ人ということで酒場を追い出されたコムちゃん。酒場の外で、片足を怪我したキムちゃんと、そして顔なじみのハマコと出会います。
コムちゃんとキムは互いに不法滞在者。身分証明書を持たない、肩身の狭い身の上。
昔の恋人、ゆめみちゃんとの仲も修復できず、コムちゃんは孤独を一身に背負い、でも、それを受け入れているように見えました。
ハマコが手に入れてきた身分証明書、それをキムちゃんに譲ったコムちゃんはハマコと「男のキスは嫌いなんだよ」と言いながら、熱い抱擁を。
そして「平和になったらリビエラに行こう」。
ああ、やっぱりリビエラなんだ。そうか、そうなんだ。
ココロが震えるのをとめられなくなってきた。

最後のお話。
ここが一番難しかった。
正直、今でも分からない。

最後のヒロインはいづるん。
戦争で全てをなくした、心まで満身創痍の少女。
上手のイスにうずくまる姿が、本当に痛々しくて。全身を尖らせて、自分を傷つける全てから身を守っている様子が伝わってくる。
コムちゃんはジージャン姿(この衣装は昔のヤンさんのものかなあ?そんな感じ。ぶっちゃけかなりイケてない)のゲリラの少年。
コムちゃんに語る少女の言葉「戦争が起こって、男は集められ、女は草むらへ。子供は捨てられて、残ったのは瓦礫だけ。私も瓦礫。」(正しくないけど、こんな感じの台詞だった)が痛くて痛くて。
少女は自分だけを守ってくれる兵隊さんを待っている。それが夢だと知りながらも。
少女と同じく、戦争による辛い過去を背負っている少年。
ポツリポツリと言葉を交わすうちに、2人の間には少しずつ水が流れ出す。細い細い流れ。でも確かに水が、命を生み出した母なる水が流れ始めているのが見える。
でも、少女は少年を兵隊に売った。
「私を殺して逃げるの?」「いや、君は俺を助けてくれたから」
少女の中に流れる水が勢いを増す。
「私のことが嫌いなんだと思ってた」「俺なんかが触ったら、君が穢れるだろう」
濁流が、全てを押し流す。
チカラを得た水が、少女の心の中で堰を切ったように流れ出す。
「私があんたの昨日になる。だから、あんたが私の明日になって」
「きっとあいつらはあんたが北に逃げたと思うわ。だから南に逃げて!」

魂と魂がぶつかり合う。その魂までも巻き込んで、大きな水の流れがうねっていく。そして、その流れは南を目指す。

最後に響いたのは、一発の銃声。

舞台が明転すると、一番最初のサーカスの場面へ。
離れ離れになってしまっていたコムちゃんを見つけたヒメ。
「ここにいたのよね」の台詞が切ない。

でも、「あんたがどこかへ行っちゃうって知ってるんだから」。
そう、12月24日には、どこかへ行っちゃうんだね。
知ってるよ。
そんな苦しい事実を突きつけられる。

「どこにもいかないで、ここにいて」
そう願う女の声を背に、男は歩き出す。そしてその姿を、4人の女が見つめる・・・・。

大好きな曲にこんな一節があります。
「変わらないでと願う女のそばで、男は変わらなきゃとうなだれる」
B’Zの歌詞の中の一部分。
日常生活の色々な場面の中で、この歌詞を実感することが多々あるんですが。
この場面でも、それを感じました。
男と女の間の、埋められない溝。

特に最後のいづるんとの芝居。
これは、宝塚のお芝居ではないだろう。
暗くて、深くて、切な過ぎる。

でも、あえてこの芝居を、この「アルバトロス」でやってきたオギー。

今はまだ、自分の中でも物語を消化し切れていないのですが。

この人の作家としての本質を垣間見た気がしました。

コメント